2017年5月31日水曜日

山渓とツエルト

雑誌、山と渓谷の取材の日でした。厳密に言うと僕が取材されたというよりも、登山装備の中でなかなか日の目を見ないツエルトという、簡易テントと言ってもいい装備のetcの監修役って感じだったでしょうか。久しぶりに瑞牆山の麓に向かいました。塩川ダムのみずがき湖に架かる立派な橋。


気持ちの良い林の中のドライブ。このコーナーを入るとしばらくしてある意味絶景が広がります。整備された芝生の広場と遠くの山の絶景です。


広場手前から見た瑞牆山。春霞の日が残念、青空だとむちゃくちゃ奇麗です。


一番尖がったピークは、瑞牆山の十一面のピーク。このピークの下は、日本の岩登りの歴史上様々なムーブメントが起きたエリアです。日本で初めて5.12というグレードがついた「春うらら」というルートも見えました。


シャクナゲとツツジと瑞牆山。


近くの森に移動。この辺は樹間も人の手が入っているのか?ヤブはほとんどありません。シラカバまじりの高原の気持ちの良い森、その中に大岩がいくつもあって、ボルダリングという大岩上りに興ずる人もいます。


登山装備のツエルトを実際張ってみていろいろ検証しました。写真は、とにかく四の五の言ってないで早くツエルトを張る!というテーマ。ロープとスリングがあれば3分かからないで張ることが出来ます。風が強い中で休憩するときにはバッチシの張り方です。ただ普通の登山者はロープを持っていないので上級編ということになりました。


これはトレッキングポールとガイラインを使った、昔ながらのテントを張るのと同じ張り方です。


ガイラインやグランドを決めるのにペグを使いますが、地面が柔らかだったので枯れ枝をペグとして使いました。地面にプレースできれば、枯れ枝はとても有効です。回収の必要がないので、撤収するとき折ってしまえば素早く撤収できます。


僕のお気に入りのフライシート。タイベックという素材のフライシートです。オリジナルです。ツエルトだけだと、寒暖の差がある季節は特に内部が結露してビショビショになってしまいますが、フライシートをかけるとほぼ結露しません。おまけに片側を起こして設置すれば、雨除け、調理場、荷物置き場にも利用できる優れものです。


ファイントラックの小さめのツエルトも張ってみましたが、ん~んイマイチ。


多目的にツエルトを使うとしたら、小さいサイズはお勧めできません。


開発された15デニールの生地のファイントラックのツエルト。実際に張ってみるとなかなかいろいろ課題が見えて推奨品とはなりませんでした。ベストチョイスと言えるようなツエルトはありません、どれも一長一短です。


三十数年前のゴアッテクスのツエルト。内部の結露のことを心配するならこいつは使えます。シングルウォールより透湿性が良いので結露しにくいです。このゴアのツエルトを一番使いました。


ツエルトを使うスチュエーションを考えてみました。

◇急な悪天候、雨・強風・雪・吹雪などに見舞われた時、設営して体力を温存する。
◇ツェルトにくるまって首だけ出して体温が冷えないようにする。
◇パーティで行動している場合や、複数人で布団のように包まって使うこともできる。
◇レインウェアのないメンバーにこれをかぶせて合羽がわりにする。
◇レジャーシートのように地面に敷いて使う。
◇登山の途中で、休憩や昼寝用として設営する。
◇大雨や吹雪の時、岩陰や洞窟、雪洞などに一時的に避難した際、風や水の浸入を防ぐため、フタのようにして使う。
◇荷物を軽量化するため、テントの代わりとして使う。
◇強い日差しや雨をよけるためタープのようにして使う。
◇着替えや急なトイレ等の際に目隠しとして使用する。
◇テントの近くに設営して、テントに入りきらない荷物を収納しておく。
◇必要のない荷物をデポして行動する際、荷物を置いてカバーとして使う。
という感じでしょうか。


信州峠経由で帰りました。峠のあたらしめの道しるべ


山と渓谷、7月号か8月号の付録としてスペシャルなツエルトの記事になるそうです。

2017年5月28日日曜日

シャクナゲ

奥秩父のこの時期はシャクナゲです。この花、この樹、なかなか親しくなれません。そう思い込んでいます。写真撮るのがむちゃくちゃ難しいです。実際の雰囲気が写真に落とせないし、それは自分の腕なのでしょうが、機器の問題もあるのかも知れません。昔からこんなに咲いているシャクナゲの雰囲気が伝わるような写真を撮りたいと、シャッターを押しても全く伝わらない写真ばかりです。そんなレベルのシャクナゲの写真の記事です。


鶏冠尾根です。標高1300mくらいからシャクナゲの花が登場。でもほとんど花は終わっていました。写真は標高1500mを越えたあたりの開花状況です。


第二岩峰辺りからの第三岩峰。鶏冠尾根は第三岩峰辺りからシャクナゲが濃くなります。そこから奥秩父の主稜線である木賊山に向かって鶏冠尾根をトレースすると、標高2200mあたりのアップダウンとなりますが、シャクナゲがとても濃く、トレースがあるのでさほど苦労はしませんがシャクナゲの存在が鬱陶しくなるやぶです。


シャクナゲははツツジ科の常緑低木、ツツジの仲間だったんですね。標高によって開花状況が違うので、シャクナゲの花の蕾から終わりまでの様子を撮ることが出来ました。これは蕾です。


アズマシャクナゲ(東石楠花)です。


ピンボケですんません。


株の個体によってピンクの濃さが違います。それでも蕾から花が開くまではどぎついピンク。葉の裏は淡い褐色の綿状の毛が密生していて、表面はツルツルしています。


なんか初々しい咲き始めのシャクナゲの花。


これはピンクが濃いです。


こちらは薄いシャクナゲの花。


咲き終わりの近い花には、たくさんの蟻が蜜を吸っているのでしょう、忙しそうに働いていました。


シャクナゲの樹、樹高は2~5mほどになります。密生しているところは突破がかなり厳しいです。山梨あたりの山だと、高山のハイマツ漕ぎの次に出会いたくない藪がシャクナゲです。先が見にくいのと、簡単に折れないこと、かき分けて進むのがとってもしんどいシャクナゲの藪です。


イワカガミのピンクはまだ蕾でした。


シャクナゲでなじみ深いのは、キバナシャクナゲ、ハクサンシャクナゲ、そしてこのアズマシャクナゲでしょうか。山梨で活動している僕の感覚です。

2017年5月27日土曜日

鶏冠山

鶏冠山(とさかやま)に登って来ました。笛吹川の上流、ハイカーでにぎわう西沢渓谷のとなりの東沢渓谷のとなりの鶏冠尾根の岩稜です。秩父に通じる国道140号線の雁坂トンネル手前のループ橋から覗くように見えた鶏冠尾根。甲武信ヶ岳の南の木賊山から派生している尾根です。


西沢と東沢の二俣の上に架かるつり橋を渡って東沢に入ります。以前は3回渡渉して鶏冠谷出合でしたが、数年前に流れが変わってそのまま本流を歩いて鶏冠谷出合に行けるようになっています。川の流れの変化なので人為的なものではありません。


鶏冠谷出合で靴を脱いで渡渉するつもりで来たら、なんと橋が架かっていました!有り難く使わせていただいて対岸に渡りました。


鶏冠谷に入って沢はこんな感じです。右岸を登って行きます。


整備されて、いろんな意味で登りやすくなった鶏冠山ですが、ある程度の登山経験がないと簡単ではない山に変わりはないです。ペース配分やルートファインディングがしっかりしてないとなかなか危ない山です。下の写真これだけを見て、どこをどうやって登るのでしょう?目の前のこういった状況をどうルート取りするかを判断しなくてはなりません。


チンネのコル。
チンネというのはイタリアのドロミテにある岩峰。なんで鶏冠山とイタリアが繋がる~?なんですが、そこは日本の登山史に繋がる話です。登山後進国という意識があり、先進国はヨーロッパ。8000m峰に最初に登ったのがフランスですし、山岳会が初めて出来たのがイギリスです。何かにつけ追いつけ追い越せの時代につけられた名前だと思います。チンネです。


 サクラソウの仲間はなかなか難しいです。それでもこれはクモイコザクラでしょう。南アルプス、八ヶ岳、奥秩父というエリアでしか出会えない花だそうです。この花に出会うために登って来ました。


日陰のジメジメした岩場に咲く花です。サクラソウの仲間の中でも小さい方です。漢字で書くと「雲居小桜」


希少価値がある花に出会うことを目的に山に登るという経験が今までなかったので、とても新鮮な感覚でした。


 登りながら、ピンクの花が見えるたびにウォー!となりました。本当に咲いている場所は限られているからです。


クモイコザクラ、コイワザクラの変種だそうで、コイワザクラと比べて葉の切れ込みが
深く、鋸歯が鋭いという点などが異なるようです。


やっぱ険しいトレース。


 岩稜の一番上を歩くのが合理的なので、こんな鎖場も登場しますが、すごく簡単な岩登りの技術で通過できます。



鎖場のトップのアンカー、バックアップであるはずのアンカーは相変わらず番線という針金なのにはがっかりしました。


次の鎖場の最終アンカーも番線という針金です・・・


第二岩峰から尾根を下って、樹林帯に入ります。


 第三岩峰の下を巻いて第三岩峰に立つ山梨百名山の標識まで来ました。だいぶ疲れた標識です。


あえてここで第三岩峰と言っているのは、鶏冠山の山頂は北に30分行ったところのピークなので、その違いを言いたいということでしょう。とは言っても険しい下りがあるのでここから帰りました。


ピンクテープを追いかけるのではなく、地形図で地形と現在地を照らし合わせて行動します。それが本来の登山です。


東沢の本流まで下って来ました。


この橋は危険です。少しでも濡れていると滑ります。捻挫した人もいました。ステップを確実にとらえなくてはならない橋です。


ゲートの小鳥のオブジェ、駐車場はすぐ下です!