2016年8月30日火曜日

北方稜線

すごく有名なヴァリエーション「剣岳北方稜線」、剣岳の北側にのびるギザギザの尾根の、剣岳山頂から小窓というコルまでをトレースすることを指すことが多いです。稜線はもっと北の方まで伸びていて、本当の意味で北方稜線をトレースするには一週間以上必要でしょう。自分の経験値を上げるという目標で行って来ました。

大まかな流れは、
信濃大町=扇沢=室堂-別山乗越-剣沢-長次郎谷-長次郎のコルから剣岳ピストン-池ノ谷乗越-三の窓-小窓-池の平小屋-剣沢-ハシゴ段乗越-内蔵助平-黒四ダム=信濃大町、ということになります。どうせ行くなら剣岳初登ルートの長次郎谷からということで、熊の岩までが一日目。残雪が少なくて苦労したという記事がこちら。熊の岩の天場は明るくなってから出発。


天気予報が悪い方に外れて一日中雨・・・夜半の雨もすごくって、すべてのものが濡れてしまった。写真もレンズに水滴がついてイマイチなのはお許しください。長次郎谷左俣をつめました。


長次郎のコル。テント張れます。


剣岳山頂
長次郎のコルから山頂までアップダウンがあり、しかも急傾斜の岩場でした。想像以上でした。


雨とガスで視界がきかない中での剣岳山頂の三角点。平成16年(2004年)に設置されたもの。


一般ルートではない北方稜線。ルートファインディングも含め自己完結できないと入れません。


長次郎のコルに戻って長次郎の頭(岩峰)を右に巻き、隣のルンゼには太いハイマツで懸垂下降15m。


小さな双耳峰の間もテントが張れます。ここから壁のようなフェース状のクライムダウン、ホールド、スタンスがたくさんあって意外に簡単。


くっそー!八ツ峰、チンネ、ガスガスで針峰群がまるでお化けのようにしか見えない・・・


池ノ谷乗越。北方稜線は岩峰の間にあるコルを追っていくとわかりやすいと思います。
長次郎のコル⇒池ノ谷乗越⇒三ノ窓⇒小窓。


真ん中の池ノ谷ガリーを下ってきました。岩屑のガラガラな下り。


三ノ窓のテントサイト。


三ノ窓から見たジャンダルム、奥がチンネ。なんとも恨めしい天気。


小窓王のピークを巻きます。



ルートを示すものはあまりなく、こんなペイントにホッとしました。


小窓に向かうトラバース気味のルンゼ。ここは残雪に悩まされるところということでしたが全く雪はなく、簡単に通過しました。小窓に向けての激下りが始まります。


小窓雪渓。氷河として認められた雪渓なので小窓氷河と言ってもいいかもです!?


奥の岩に丸ぁるいしるし。雪渓を離れて登山道の取りつきです。


雪渓の縁はよく観察して行かないととても危険。


池の平小屋までの登山道の半分は侮れません。ロープやアンカーが設置されていますが、ちょっと古め。下の写真の看板まで来ると安全地帯です。この看板は展望台と呼ばれているところ。


濡れ鼠のようになって池の平小屋到着。一日半雨の中の行動で、予約はしていなかったのですがなんとか泊めていただきました。お世話になりました。ありがとうございました。


寒くはありませんでしたが、なんと風呂をたてていただきました。


池の平温泉!


狂犬病ならぬ剣キチ!


モリブデンという鉱石。小屋もそうですが、登山道も鉱山絡みのものだったようです。


翌朝は良い方に天気が外れました。朝焼けの八ツ峰


池の平山と池の平小屋。小屋の方々が見送ってくれました。


ギザギザの屏風のような山の周りをぐるっと歩くわけなので、ちょっと歩いただけで景色がどんどん変わって楽しめます。


仙人峠の木道。


とんがりは白馬岳です。


仙人新道を剣沢に向かって下ります。そして、写真の最低鞍部、ハシゴ段乗越という峠に登り返すんです。つらい登りです。


小窓と三ノ窓雪渓。


剣沢二股のつり橋。細かく分解できるような構造のつり橋。


剣沢左岸に登山道は付けられています。小さなケルンがたくさん。


こんな狭いところもあります。細かなアップダウンの登山道。


剣沢右岸に渡ってハシゴ段乗越の登りとなりますが、今年はまだ剣沢に橋が掛けられていませんでした。それでもロープが設置されていて有り難かったです。水は上流の大きな雪渓からの雪解け水なので切れるような冷たさです。パンツ一丁になって渡りました。


ハシゴ段乗越のはしご。結構疲れているハシゴです。


ハシゴ段乗越から見た内蔵助平。奥は丸山で、丸山の向こうに黒四ダムです。


内蔵助平までは河原。とても歩きにくいです。


ここもよく整備されています。


槍ヶ岳山頂下のハシゴのようなハシゴでした。


丸山東壁


やっと黒部の本流に出ました。


日電歩道という登山道。


黒四ダムを下から見上げます。観光放水の水しぶきがこちらまで飛んできます。


トロリーバス黒部ダム駅入り口。


トンネルの中を少し歩いて駅です。黒部川からの登り返しがやたらときつく、本当にほっと、やっと終わったと実感できた瞬間でした。


2016年8月28日日曜日

剣沢

黒部立山アルペンルートの信州側の起点、扇沢です。この日の始発7:30に合わせて山梨を5:00前に出発しました。


切符売り場の開くのが7時くらい。たくさん並んでいましたが、受付が3人体制でスムーズに流れました。早い時間なので一般の観光客の団体さんがいなかったからだと思います。


トロリーバスに揺られ15分くらい。何の苦労もなく黒四ダムに到着。なんだかんだ言っても大迫力です。


まだ朝飯を食べていなかったので、ケーブルカーに乗って到着した駅でかけそば550円。


ロープウェイからの後立山の眺め。


もう一回トロリーバスに乗って到着の室堂。正面が立山です。


みくりが池がきれいでした。


去年工事していた遊歩道が完成していて、奥に雷鳥沢ヒュッテが見えます。右下の雷鳥沢キャンプ場を目指しています。キャンプ場を過ぎて浄土沢を渡ります。


浄土沢の橋。


新室堂乗越へ向かう登山道の木道。雷鳥沢の登山道は別山乗越に直接行きますが、左から巻くように新室堂乗越経由でも時間はあまり変わりません。新室堂乗越のほうが傾斜がなくて優しい登山道。


お花畑はすっかり終わっていました。存在感があったのがチングルマの綿毛。




アップにしてみました。


タテヤマリンドウは咲きはじめ。


なんとオコジョ登場!


剣御前小屋のある別山乗越を越えて、いよいよ剣沢を下りました。見えているのは剣沢小屋の赤い屋根と前剣のピーク。


ここからが本題です。今年は冬から雪が少ない、雪が少ないといろんなところで言われてきました。剣沢も御多分に漏れず、非常に危険な状態です。残雪がしっかり残っていれば、アイゼン付けて軽快に歩けるところですがそれが叶わないということです。剣沢小屋から真砂沢ヒュッテまで、一般登山道ではありませんというのが現在の状況です。一応右岸に登山道は整備されましたが、細い踏み跡と、ロープや梯子のルートです。


剣沢小屋からの出だし。奥は八ツ峰。


マーキングはしっかりされています。残雪がなかなか出てきません。


右の斜面につけられた夏道。やっと出てきた残雪。


近くで見ると崩落したばかりの残雪。いつ崩れてもおかしくない状態だということです。


平蔵谷出合。


滑り落ちそうなスラブにはフィックスロープが張られています。


平蔵谷の雪渓の様子。雪の上はとても歩けません。


毎年雪がなくなったころに整備される夏道のアンカー。様々ですが、時代を物語っているアンカーのオンパレードでした。岩にくさびを打ち込んでも雪の重みで抜けたり曲がったりしてしまいます。


圧巻の橋!本当にありがたい整備です。


アンカーはしっかりしていたので、ちょっと怖いけどゆっくり慎重に渡れば大丈夫です。


剣沢の雪渓の状態。常に融けて変化して、おっかなくて上にあがれません。


クレバス


長次郎谷の出合。


長次郎谷をしばらく登りました。もちろんアイゼン付けてです。熊の岩まで半分くらい来たところでなんか先が不安になり、左側のスラブ帯に乗っかりました。雪渓から離れたということです。案の定ブロックが崩壊していました。こういうのは現場の感覚です。誰も教えてくれません。岩場と雪渓が離れているので、容易には渡れないし、落ちたら命がいくつあっても足りません。


スラブ帯には小さなケルン。ロープをつけるほどではない傾斜でした。


右の左岸をずっと登って正面の熊の岩を目指しました。台形の岩の上がテント場です。


源次郎尾根の小さなルンゼ(急峻な沢のこと)を見るとブロック崩壊の残雪。


熊の岩に無事到着。岩峰は八ツ峰です。ここは水もあって、10張以上テントが張れて落石の心配がない場所です。普通はここから八ツ峰の岩壁にクライミングするクライマーが泊まる場所というイメージですが。


剣沢から長次郎谷に入って剣岳に登るルートはとても有名です。映画「点の記」のルートです。
「点の記」のルートは、明治の測量隊が登頂を遂げたルートで、長次郎谷の雪渓を詰めて、北方稜線から剱岳の本峰に辿るルートです。雪渓は、取り付きからコル(長次郎のコル)までというのが例年ですが、今年は熊の岩から先はありませんでした。標高差1000mあります。

このコースは、その年や時期の雪渓の状態によって難易度に差がありますが、バリエーションルート(入門)とされています。

宇治長治郎という名ガイドが剣岳測量隊を案内して、剣岳に登ったら人の痕跡があったという有名な話です。長次郎谷は宇治長治郎からつけられた地名です。
以前こんな記事も書いてます。⇒こちら